流産しても「絨毛染色体検査」を受けられない人が多い? ガイドライン上の基準は?

不育症
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こんにちは、ASCAです。
前回の「流産したら絨毛染色体検査を受けよう」の記事は、ツイッター上でかなりの反響がありました。

「何度も流産したのに、医師から絨毛染色体検査の案内がなかった
「検査の重要性を知っていたらやりたかった」

といった声が多々届き、「病院や医師からの検査案内不足」という問題点が露呈しつつあります。

絨毛染色体検査は、亡くなった赤ちゃんの死因を解明する重要な検査なのに、なぜ検査を推奨しない医師がいるのでしょうか?

今回はその理由や、何回目の流産なら検査すべきか等について、日本産婦人科医会のガイドラインを参考にお伝えしていきたいと思います(患者目線の情報なので、間違い等があってもご容赦ください)。

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ガイドラインでは「2回目の流産」で検査案内

「流産時、医師から絨毛染色体検査の案内をされなかった」という患者さんが多すぎて、「え?なんで?」と疑問に思った私。そこで一般的な産婦人科の診断基準となるであろう、日本産婦人科医会の最新版ガイドラインを調べてみました(2019年時点)。

すると衝撃的な情報が。

  • 反復・習慣流産患者(★)が新たに流産した場合、流産物(胎盤絨毛あるいは流産胎児)の染色体検査を行う」
  • 2回目の流産において胎児染色体検査を行う」

「反復流産=2回続けての流産」「習慣流産=3回以上の連続した流産」

(出典:日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン-産科編 2017」P.135~138)

!?!?

ガイドラインに!書いてあるじゃん!
「2回流産したら、絨毛染色体検査をしよう」的な話が!!!

1回目の流産でも、「反復流産」の可能性を説明する

上記ガイドラインでは、さらに衝撃的な情報が。これです!

「流産診断時の注意点:流産原因や反復流産の可能性についても説明する」
(出典:日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン-産科編 2017」P.127)

これは「妊娠12週未満の流産診断時」のガイドラインです。

つまり流産が1回目でも2回目以上でも、「流産原因の説明」はすべきであり、「反復流産の可能性(不育症検査の案内等)」も必要ということでしょう。


しかしツイッター上では、

「医師には『赤ちゃんの染色体異常でしょう』の一言で片付けられ、検査しなかった」
3回流産したけれど、1回も絨毛染色体検査の案内を受けていない

という患者さんの声も多々・・・唖然としました。

私も1回目の流産時は検査を強く勧めてもらえず、2回目は検査案内すらありませんでした(それぞれ別の病院、別の医師)。

ただ、そんなずさんな体験をしたのは、私だけだと思っていました。
でも現実は、そうではありませんでした。

検査の必要性について十分に案内されず、流産手術だけで処置が終わってしまう方も多いのです。
(実際にツイッターで寄せられた声については、後日まとめてご紹介します。)

なぜ医師は「絨毛染色体検査」の案内をしないのか?

赤ちゃんが亡くなった原因の手がかりを得るための、「絨毛染色体検査」。
次の流産対策に進むためにも非常に重要な検査ですが、なぜ検査案内をしない医師がいるのでしょうか?

患者視点で5つ、理由を推測してみました。

①自然排出されたから

自然流産は大まかに、下記の2種類に分けられます。

  • 進行流産:出血が始まり、子宮内容物が外に出てきている状態
  • 稽留流産:胎児は死亡しているが、まだ出血や腹痛などがない状態

(出典:公益社団法人 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」

前者の「進行流産」で多くの子宮内容物が出てしまっている場合、いわゆる自然排出された場合は、絨毛染色体検査の実施は難しいです。

理由は以下の通りです。

「子宮内容除去術により摘出する場合には絨毛部分の選択は比較的容易であるが、自然排出された子宮内容物は絨毛部分の選定が困難となる場合も多いため特に注意が必要」

(出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「No.99 流産のすべて Ⅴ. 不育症専門医より一般産婦人科医に知ってもらいたい不育症のトピックス 4.流死産絨毛・胎児組織(POC:product of conception)染色体検査 (POC 検査)」
※該当ページの直リンクが貼れないので、お手数ですが↑の目次から辿ってください。

自然排出された赤ちゃんを病院に持って行っても、検査に必要な絨毛の選定が難しいので、検査を断られる可能性が高いようです。

②検査費用が高いから

前回の記事でもお伝えしましたが、絨毛染色体検査は保険適用外です。高額です。病院によりますが、約2〜8万円くらいかかります。

軽く出せる金額ではないので、「患者さんの経済的負担になる」という観点から検査を勧めない医師も多いのかもしれません。

私も1回目の流産時、医師から下記のようなことを言われた記憶があります。

「赤ちゃんの染色体を調べる検査もあるけど、高いし、流産は大体染色体異常が原因だから、無理にやらなくてもいいと思うよ?」

当時はまだ1回目の流産だったのと、流産診断のショックで冷静さを欠いた状態だったので、「やらなくてもいいか」と判断してしまいました。医師の気遣いのような誘導に乗った形です。

しかし3回流産した今となっては、「大金を払ってもやるべきだった」と後悔しています。

③流産の原因は「大抵」、胎児染色体異常だから

これも前回お伝えした話ですが、初期流産の原因の多く(約70~80%)は赤ちゃんの胚の染色体異常です。一部の医師からすれば「わざわざ検査しなくても、おおよその原因はわかりきっている」ので、検査を実施しないのでしょう。

ただ、それは「おおよその原因」でしかありません。約70~80%の流産は胎児染色体異常によるものだとしても、約20~30%は胎児染色体異常が原因ではないのです。


つまり、母体または男性側の原因で亡くなってしまった可能性もあります。

キツい表現でごめんなさい。ただ私は、「あなたのせいで亡くなった」と言いたいわけではありません。
「赤ちゃんの染色体が正常ならば、追加検査(不育症検査等)で原因を調べて発見があれば、次の流産を防げる対策が見つかるかもしれない」ということをお伝えしたいのです。

なお、胎児染色体異常であっても、異常のタイプによっては別途検査や対策が必要なケースもあります。

詳しい話については今後記事化しますが、「とにかく絨毛染色体検査は重要!!!」ということだけ、覚えていただければ幸いです。

④患者が「検査したくない」と言ったから

産婦人科診療ガイドラインで、絨毛染色体検査は「Answer4. 反復・習慣流産の原因を検索する場合には以下の検査を行う」(P.135)の欄に載っているだけです。

つまり、「特に原因を知りたくない」というの患者さんには検査を行わない、ということでしょう。

⑤医師が「必要ない」と判断したから

流産時に絨毛染色体検査を勧める医師も勿論いますが、患者さんの声を聞く限り、「医師の判断によって検査しない」というパターンもあるようです。

「なぜ検査する必要がないと判断したのか」は、正直わかりません。患者さんの症例にもよるし、各医師の積み重ねてきた経験、知識あっての判断なのでしょう(まさか知識がない可能性については・・・考えたくありません)。

ただ、この記事で散々引用してきたガイドラインでは、

流産した患者さんには(過去の流産回数問わず)、反復流産の可能性と流産の原因を説明する
2回目の流産時には、絨毛染色体検査を行う(患者の希望があれば)」

という主旨のことが書いてあります。
なので、検査の有無は医師が勝手に判断して良い問題ではない、と私は思うのです。(各病院ごとに、また別のガイドラインが用意されているのかもしれませんが・・・)

***

確かに医師は専門家です。患者は素人に過ぎず、知識は乏しいです。

私のような患者が、口を出して良い話ではないかもしれません。医師からすれば、この記事もツッコミどころ満載かもしれません。申し訳ありません。

でも、流産した方は「大切な我が子を失った」のです。
大切な子供がなぜ亡くなったのか、知りたいと思っている患者さんもたくさんいます。

産婦人科医や医療従事者の皆様、そういった患者側の気持ちも汲んでいただけないでしょうか。どうかお願いします。
3回流産したのに、2回も検査できなかった不育症患者の私からもお願いです。


次回は私のツイッターに寄せられた、「流産したのに、絨毛染色体検査ができなかった患者さん達の声」や、現状の産婦人科の対応の問題点について、患者目線でお伝えしていきたいと思います。

それでは。

ASCA
この記事(マンガ・イラスト)をかいた人

流産を繰り返す「不育症」の患者。20代で3回妊娠するも、すべて流産。

32歳、仕事はWebライター。流産を繰り返すうちに適応障害が悪化→うつ病になり、半年間休職。その後はうつ病の治療を続けながら復職し、2020年夏に4回目の妊娠→2021年春に出産。

「妊娠したら出産できるとは限らない」ということを、多くの方に知ってほしい。
流産や不育症で悩む方への情報発信、「不育症」の認知度を上げるためにブログをやっています。趣味レベルで漫画も描きます。

当サイトのコンテンツ全て(記事/イラスト/漫画)の無断使用・無断転載を禁じます。

■Twitter
https://twitter.com/asca_fuiku

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3回流産 不育症のASCAのブログ

コメント

  1. ロコ より:

    はじめまして。ascaさんのブログに大変共感します。

    私は不妊治療の末、最近3回目の流産をしたばかりです。
    2回目の流産の時、1回目の流産時に手術してもらった一般産科に電話し、今度は手術と併せて絨毛染色体検査を受けられるか問い合わせたところ、電話を代わった看護師から「何の検査がしたいか分からないから正式名称を調べて問い合わせてください」と迷惑そうに言われ、すぐ調べ直して「胎児絨毛染色体検査」とメモして電話をかけ直しました。そこでやっと院内の体制を調べて貰え、医師に相談の上で検査可能と回答がありました。
    診察に行って、医師に検査希望だと話すと「悪いけど意味ないよ。染色体検査をしたいなら夫婦のをやれば良いでしょ。」と、かなり見当違いな回答をされました。立ち会った看護師からも、私がナーバスになって無用な検査を要望しているかのような感じで苦笑いされ、なだめられてしまい屈辱的でした。こちらが粘って検査予約に漕ぎ着けましたが、手術前に自然に出てきたので検査には至りませんでした。
    その医師からは他にも心無いことを言われ…病院に事実経過を明記して抗議文書を出そうかと思ったほど怒りが湧きましたが、今後ほかに近所で流産手術をしてくれる病院を見つけられるかという不安もあったし、何より虚しくてやめました。
    これまでの人生でも多分一番くらい弱っていた時に、トラウマになるような病院での体験でしたが、夫に話してもピンと来ないようだし、ほかに打ち明けられる相手もおらず、ただ悔しかった気持ちが今も残っています。愚痴みたいになってしまってごめんなさい。

    当時、もしascaさんが紹介していらっしゃるようなガイドラインの存在を知って、参考資料として診察時に持参して示していれば、あんな悔しい想いはしなくて良かったのかもしれません。自分は30代半ばで職業柄も面の皮が厚い方なので、医師や看護師にムカつきながらも丁重に説得して院内の手続きを調べてもらい、最終的には検査予約できましたが、もし自分がもっとずっと若かったり、控えめな性格だったり、ショックで弱りきっていたら、もう遠慮して諦めてしまっていたと思います。

    一般産科だと不育症の人って少数でしょうから、そういう病院に行って適切な配慮を求める方が求めすぎなのでしょうかね…
    不育症と分かった今なら、自分を守るために適切な病院を選ぼうと思えますが、最初は皆一般産科にまず行くでしょうし、地域的に専門医まで行きにくい人もいますよね。もう同じ嫌な思いをする方が本当に続いて欲しくないです。想像しただけで悲しくなります。

    ご存知かもしれませんが、生殖医療専門医のブログで、絨毛染色体検査は母体の組織が混入する場合もあるから、採取手技や提出の際の方法も重要だと読みました。そのあたりの医療現場の実情は分かりませんが、個人的には、上記の体験も踏まえ、知識の乏しい医師を説得してまで不慣れな検査をしてもらうより、不育症に一定の理解があって検査の意義も理解している医師に適切な検査を依頼したいと思いました。
    今後も治療は続けますが、(悲しいですが)あらかじめ流産時のことを考慮して、主動吸引法を採用していて、検査も実施している不育症専門外来に通おうと思い、今は病院探し中です。

    こちらのブログは、流産手術にも種類があることなど不育症の人が不安に思っているトピックを本当に分かりやすくまとめてあって、すごく役立つ内容だと思います!ご自分の体験を社会に共有して、学んだことを還元しようとされていて、すごく立派な方だと思います。
    私も、同じような問題と戦ってる方がいると思うだけで、一人じゃない、まだ少しがんばろうって思えました。
    すでに皆さんに大きな貢献をしていると思うので、無理のいかない範囲でブログを運営して頂けたらと思います。
    長文失礼しました。
    ありがとうございました。

    • ASCA より:

      ロコさん、初めまして。ASCAです。
      ブログをご覧頂き、ありがとうございます。
      実は記事にコメントを頂くのが初めてで、とても感激しております!

      コメント拝読しました。
      不妊治療の末、流産を3度も経験されたとは・・・辛すぎますね。
      金銭も心身も擦り減らして、大変な苦しさを抱えていることかと存じます。
      ロコさんの頑張りが報われてほしい気持ちでいっぱいです。

      >「悪いけど意味ないよ。染色体検査をしたいなら夫婦のをやれば良いでしょ」
      医師の↑の発言、絶句しました。
      産婦人科医なのに「胎児絨毛染色体検査」を知らないのか・・・?と。

      信じたくない現実ですが、やはりロコさんの仰る通り、一般産科と不育症専門医の間ではかなりの知識差があるのだろうと私も思っています。例え同じ「医師」だとしてもです。
      地域による医療格差だけでなく、医師間の知識格差も問題の1つだと痛感します。

      不育症の原因・治療はまだ研究途上中で、病院も玉石混淆です。
      理不尽な話ですが、患者自身がある程度知識を付けておくことも不可欠かと思います。ご自身の体と、これから授かる命を守るためにです。

      私はこれまで自分の無知で、散々後悔したり、遠回りしたりしてきました。ロコさん始め、不育症で悩む患者さんに同じ道を辿ってほしくありません。一患者に過ぎませんが、これからも何かロコさんにとって道しるべになる情報を発信できたら幸いです。

      「すごく役立つ」「一人じゃないって思える」「大きな貢献をしている」というお言葉の数々、本当に本当に励みになります・・・!ブログを始めて良かった、と心から思いました。

      お言葉の端々にロコさんの優しいお気遣いが感じ取れて、とても嬉しかったです。
      辛い道のりですが、一緒に頑張っていきましょう。お互い無理のない範囲で。
      こちらこそ、本当にありがとうございます。

      ASCA