こんにちは、ASCAです。
今日は、原因不明の不育症患者さんにとって、ヒントとなるかもしれない情報をお伝えしたいと思います。それは、「ビタミンD不足と不育症の関連性」です。
多くの不育症外来は「ビタミンD」の検査をしていない
さて、不育症患者の皆さんに質問です。
もしかすると、多くの患者さんは未検査かもしれません。なぜなら、多くの不育症専門外来は、ビタミンDの検査をしないからです(不妊症のCLでは検査することが多いと思いますが)。
例えば、不育症専門外来として有名な杉ウイメンズクリニックでは、ビタミンDの検査はしません。この理由について、杉先生はHPで下記のように述べています。
・上記の各論文には日本人のデータがない
・ビタミンD検査をしてもどうせ何割もの人が引っかかり、サプリを飲むことになる
・数ある不育症検査の中で、プライオリティーが高いとは思えない
・医療というよりは「生活習慣」の問題
こうして箇条書きにしてみると、「な~んだ!じゃあビタミンDなんて検査しなくてもいいじゃん」と思われそうですが、杉先生はこうも述べています。
ビタミンDは、妊娠にも胎児にも大切なのは間違いありません。当院は決してビタミンD不足を容認している訳ではないので、そこは誤解の無いよう。
…つまり、「検査はしていないけれど、妊娠や胎児の成長を考えるとビタミンDの摂取は大切!」という見解です。
そもそもビタミンDって?流産や妊娠との関連性は?
ビタミンDとは、カルシウムの吸収を促進し、骨の形成をサポートする栄養素です(※出典1)。近年では免疫力の向上や2型糖尿病の予防、そして妊娠しやすい体作りに有効なビタミンとして注目を集めています(※出典2)。
このビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収が不十分となり、妊婦・胎児両方の骨の形成に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。また不妊症や不育症の観点では、下記との関連性が報告されています(※出典3)。
ん…?
「習慣性流産(流産を3回以上繰り返す状態)との関連」…!?
ビタミンD不足は流産に関係する?しない?
ビタミンDと不育症(流産)については、「関係がある」「関係がない」という説で分かれています。
ビタミンD不足は不育症(流産)に「関係する」説
ビタミンD不足と不育症の関連性を指摘しているページを、いくつかご紹介します。
①リプロダクション東京クリニック「25ヒドロキシビタミンD検査」/概要⬇️
ビタミンD不足は、
1.卵の数や質の低下
2.妊娠率低下
3.不育症
4.妊娠合併症(妊娠中毒症、妊娠糖尿病、低体重児など)
などと関連します。上記の他にも多嚢胞性卵巣(PCOS)・子宮筋腫・子宮内膜症とも関連すると考えられています。
②草津レディースクリニック(日本産科婦人科学会専門医)・森院長のインタビュー記事/概要⬇️
妊娠中にビタミンDが不足すると、母体や胎児へのリスク、出産のリスクが高くなります。また、卵胞発育障害・着床障害・免疫性の不育症といった不妊要因にもビタミンDが深く影響しているという報告もあります。
「習慣性流産の方のビタミンD濃度は低い」との報告もあります。ビタミンD濃度が低下すると、抗リン脂質抗体・NK活性・抗核抗体・抗DNA抗体の数値が上昇するそうです。
ただしあくまで海外の文献ですので、日本人の研究ではどのような結果が出るのか、今後もビタミンDと妊娠率について注目していきます。
③日本産婦人科学会シンポジウム「不育症とビタミンD」の講演/概要⬇️
不育症の原因となるNK活性★は、ビタミンDによって有意に抑制されることが解りました。
ビタミンDは、NK細胞★(ナチュラルキラー細胞)から分泌されるインターフェロンなどの炎症性サイトカイン(IFNγやTNFα)を抑制します。また、NK細胞のサイトカイン産生に関与する転写因子NFkBの細胞内移行もビタミンDにより抑制されます。
ビタミンDは炎症を抑える作用がありますが、逆に「ホモシステイン(HCY)」は炎症を誘発します。不育症患者の方の血液中のホモシステインとビタミンDの濃度の間には、有意な負の相関(一方が増えるともう一方が逆に減るということ)を認めました。
④千葉アンチエイジング研究所「妊娠前のビタミンD濃度と妊娠率や出産率、流産率」/概要⬇️
妊娠前からビタミンDが足りている女性は、足りていない女性に比べて、妊娠率・出産率が高く、流産率が低いことがアメリカで実施された研究で明らかになりました(研究対象は、過去に1回か2回の流産の経験があるが、不妊症ではない18〜40歳の女性1191名)。
この研究でわかった結果は、以下のことです。
・ビタミンDが足りている女性は、足りていない女性に比べて妊娠率が10%、出産率が15%高い
・妊娠前にビタミンDが足りていた女性は、足りていなかった女性に比べて流産率が12%低い
・妊娠8週目のビタミンD濃度は流産率と関連しない(※一方で、「妊娠初期こそビタミンD補充」が必要という説もあります)
ビタミンD不足は不育症(流産)に「関係しない」説
本論文は、ビタミンD濃度と体外受精成功率との関係についてのレビューとメタアナリシスで、11論文・2700名の女性について研究結果を統合・分析したものです。
(中略)
本解析では、流産率には有意差は認められませんでした。
ビタミンD検査をやる意味はあるのか?
さて、ご紹介したように、ビタミンDの流産予防効果については見解が割れてしまっているのですが、個人的には、不育症患者さんはビタミンDの検査をしたほうが良い気がしています。
…というのも、3回流産した私自身が重度の「ビタミンD欠乏症」だからです😇
ビタミンD不足の女性はかなり多い
ビタミンD(25-OHビタミンD)の国内基準値は、以下の通りです(※出典5)。
冒頭で紹介した杉先生も仰っていましたが、半数以上の女性はビタミンD不足あるいはビタミンD欠乏症という統計が出ています(※出典6)。
***
ちなみに私は、「6.9ng/mL」でした😇😇
壊滅的な数値です…。こんなに低い方は滅多にいないと思いますが、私は今年3月に不妊不育CLでビタミンD検査を行い、別のCLへ転院後に数値を見せたところ、医師にこう言われました。
ガーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
え、え…?そんなに致命的なの…?
じゃあこれまで通院した不育症外来でも検査してほしかったよぉぉ……何で検査項目に入れないんだぁぁ……
ビタミンDってどうすれば増えるの?
ビタミンDを増やすには、大まかに3つの方法があります(※出典7、8)。
- 日光浴をする(夏なら15〜30分程度)
- ビタミンDが豊富なキノコ類、魚を食べる
- サプリで摂取する
コロナ禍の昨今、テレワークや外出自粛で日光を浴びる時間が減ってしまった方も多いと思います…。なので現段階の選択肢は、「食事あるいはサプリから摂取する」にしぼられそうですね。
ちなみに、成人女性が一日で食事から摂取すべきビタミンDは、5.5μgです(※出典9)。妊婦さんの場合は、7.0μgが基準となっています。ビタミンDを多く含む食品については、このサイトを参考にすると良きかと。
なお、私は毎日食事で摂取できるほどの自炊スキルがなかったため、クリニックで処方されたサプリを飲むことにしました…。定着には時間がかかるので、ビタミンD不足+妊活中の方は、前もって摂取しておくことをおすすめします。
ビタミンDの検査は、どのクリニックで受けられる?
ビタミンDは、不育症専門外来では一般検査項目に入っていないように思います。もしかしたら、実施している病院やCLもあるかもしれませんが…。
ただ、不妊不育両方を診療しているCLでは実施しています。
もちろん↑で紹介した他にも、不妊症CLであればビタミンD検査は受けられるかと思います。今お掛かりの不育症外来で検査したい場合は、主治医に頼んでみてもいいかもしれません(オプション検査可能かは不明ですが…)。
ビタミンDと不育症の関連性については、私自身も4ヶ月前に知ったばかりです。かなり衝撃的ですよね。。
不妊症患者さんにとっては一般的な検査ですが、不育症専門外来でも検査項目に入れてほしいなぁと思ったりしています(見解がまちまちなので、敢えて項目から外しているのかもしれませんが…)。
原因不明の不育症や習慣性流産の患者さんにとって、何かヒントになりますように。
それでは。
※出典1:バイエル薬品株式会社「葉酸だけじゃない。妊活・妊娠中に欠かせない栄養素「ビタミンD」」
※出典2:江崎グリコ株式会社「ビタミンDとは」
※出典3:京野アートクリニック高輪「ビタミンDについて~さまざまな視点から~」
※出典4:静岡レディースクリニック「免疫着床障害」
※出典5:東京慈恵会医科大学附属柏病院「ビタミンDの基準値」
※出典6:日経メディカル「【日本骨粗鬆症学会速報】 日本人女性の半数はビタミンD不足、厚生労働科学研究が示唆」
※出典7:一般社団法人 オーソモレキュラー栄養医学研究所「ビタミンD」
※出典8:糖尿病ネットワーク「ビタミンDをつくるのに日光浴が必要」
※出典9:健康長寿ネット「ビタミンDの働きと1日の摂取量」
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