こんにちは。苦節4年でようやく第一子を出産したASCAです。
今回は、3回連続の流産後にメンタルを立て直した私が、4回目の妊娠→出産に向けて行った検査&治療法をお伝えします。
…その前に、一点だけ。
あくまで私個人の成功事例なので、他の患者さんにも適した治療法というわけではありません。
不育症の原因は一人ひとり異なり、適切な治療法もそれぞれ違います。私が出産できたのは、「結果論」でしかありません。
なんてウマイ話はありません。そんなに不育症は単純な病態ではありません。そんなにイージーだったら専門医も国の研究班も存在しません。そして私たち患者も存在しm(略
似たような症例の方の参考になれば…という程度の情報ですが、それでもよろしければご覧ください。
不育症に関連しそうな検査を受ける
3回目の流産から1年以上経った2020年3月に、私は妊活を再開しました。…が、すぐ妊娠にトライしたわけではありません。
また流産するのは怖かったので、不育症検査をやり直すというか、不育症に関連しそうな病態の検査をしました。
私は不育症検査の一般的な項目は一通り受けていましたが、一部のニッチな項目は未検査でした。
私の場合、Th1/2比とビタミンD、慢性子宮内膜炎は検査したことがなく…マイナーな項目ゆえに、「検査の必要はないのでは?」と考えていましたが、念のため受けました。
結果、ビタミンDは欠乏症だと発覚し、サプリを内服して対処することに。
その他2つは異常なしでしたが、Th1/2比は「不育症管理に関する提言2021」で非推奨検査と改訂されています。私が検査をしたのは2020年でしたが、2022年現在は受ける必要のない検査かと思われます。
慢性子宮内膜炎に関しては、検査をしておいて良かったと思っています。無症状のまま発症している反復流産患者は少なくないようなので…。
流産を防ぐ方法として、着床前診断(PGT-A)を検討
着床前診断(PGT-A)とは、体外受精で得られた受精卵を子宮に戻す前に、一部の組織を細い針で採取し、「染色体の本数に異常がないか」をチェックする検査です。これによって、胎児の染色体の本数異常による反復流産を防ぐことができます。
私は3回目の流産の原因がトリソミー(2本1組のはずの染色体が3本あった)だったので、「もしかしたら、それ以前の2回の流産も本数異常が原因では?」と仮説を立てました(2回目の流産までは、胎児絨毛染色体検査を受けられなかったので、トリソミーやモノソミーが原因だったかはわかりませんが…)。
この仮説が正しかった場合、PGT-Aは有効な流産防止法になり得ます。
…の前に、ちょっと待ってください。
着床前診断(PGT-A)は高額なのでセカオピ推奨!
PGT-Aは通常の体外受精費用に加え、胚盤胞1個ごとにPGT-Aの検査費用(約5〜11万円)が掛かります。
胚盤胞とは「胎盤と胎児になる部分が確認できる、成長した状態の胚(※出典1)」のことで、採卵できた卵子や受精卵すべてが胚盤胞になるとは限りません。
たくさん胚盤胞になったほうが嬉しいとは思うのですが、例えば5個胚盤胞ができ、それら全部をPGT-Aにかけた場合、約5〜11万円×5個=約25〜55万円吹っ飛ぶことになるわけです💸
しかも万が一、できた胚盤胞が全て染色体異常だったら……全滅です。また、正常胚が何個かあったとしても全部着床しなかったら…1からやり直しということになります。
PGT-Aを実施している病院やクリニックは多いですが、実施件数や実績、胚培養等のスキル、価格にはかなりの差があります。特にスキルによって、PGT-Aの成功・失敗は大きく左右されます。
まさにギャンブルですね。だからこそ、セカオピは超重要です。
若い不育症患者に、着床前診断(PGT-A)は有効か?
私は20代で、3回連続流産していました。
もし不育症検査で原因不明だった場合、PGT-A認可施設ではワンチャン適用対象になれたかもしれないのですが(2022年現在はPGT-Aの臨床研究が盛んになり実施施設が増え、対象のハードルも下がりましたが、2018〜2019年当時は実施施設が少なく、申請制の狭き門だったのです…)、私は不育抗体(抗プロトロンビン抗体)に引っかかっていたので、「申請しても、PGT-Aが必要な患者ではないと却下されると思う」と不育症専門医から言われました。
つまり、当時の私がPGT-Aを受けるには、「秘密裏にPGT-Aを行っている(日本産科婦人科学会から実施認可を受けていない)病院やクリニックを受診する」しかありませんでした。いわゆる闇ルートです。
…で私は、PGT-Aを実施してくれそうなAクリニック、知見が深いBクリニックをハシゴすることにしました。(2022年現在はPGT-Aの臨床研究施設が増えたので、無理に闇ルートを探る必要はないと思われます…多分…)
と、真っ二つ😇
どっちの道を進めば…!?と迷うところですが、正解はありません。
PGT-Aに頼ってようやく出産できる人もいれば、頼らずに出産できる人もいます。患者さんそれぞれの流産原因や年齢etc次第です。
私が「着床前診断(PGT-A)はしない」と決めた理由
私はBクリニックの言葉を信じ、PGT-Aはやらないことにしました。理由は以下の通りです。
- BクリニックのほうがPGT-Aの実施歴が断然長く、積み重ねてきた知見があった
- AクリニックはガンガンPGT-Aを勧めてきたので、怪しく思ってしまった(カモにされてるのかな?と😇💸)
- 体外受精は未経験&AMHが異常に高かったため、PGT-Aの排卵誘発時にOHSS(卵巣過剰刺激症候群)発症のリスクがあった
特筆すべきは、3つめのことです。
不妊症検査をしたら、AMHが高すぎ→多嚢胞性卵巣が発覚
私の過去3回の妊娠は、すべて自然妊娠です。昔の記事にも書いたように、排卵日を狙えばほぼ100%妊娠する体質で、不妊症とは程遠い妊娠歴でした。なので「不妊症検査をする必要はない」と検査せずにいたのですが、
という考えから、軽い気持ちで不妊症検査を受けました。
その結果…AMHが異常に高かったのです(数値:13ng/ml)😱⚡️
AMH(アンチミューラリアホルモン)とは、「卵巣内にどれぐらい卵胞の数が残っているか」の目安となる指数です(※出典2)。つまりAMHが低い人は卵胞の在庫が少ない(=閉経が早い可能性がある)、AMHが高い人は卵胞の在庫が多いことになります。
私はAMHが高いので、卵胞の在庫がたっっっくさんある人間です!わーい!良かった良かった〜!🥰
…いえ、決して喜ばしいことではありません。
AMHが高すぎる(4.0~5.0ng/ml以上)場合は、多嚢胞性卵巣症候群or多嚢胞性卵巣の可能性があるからです(※出典2)。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)
①月経が不順である
②卵巣に小さな嚢胞(卵胞)がたくさんある
③男性ホルモンが高くなるなどホルモン値のアンバランスがみられる
の3つが揃うと診断される。定期的な排卵が起きないため、不正出血が起きたり、無月経や月経不順になったり、また排卵障害のために不妊の原因にもなる(※出典3)。
多嚢胞性卵巣(PCO)
超音波下での卵巣所見に、ネックレスサイン(10個前後の小さな卵胞)が認められる症状を指す。これにより卵巣表面は硬くなり、排卵が十分にできなくなる。PCOSとは異なり、月経異常やホルモン値の異常が見られない(※出典4)。
診断の結果、私は後者の「多嚢胞性卵巣(PCO)」でした。生理周期は平均42日とかなり長く、エコーでは卵胞ギッシリのネックレスサインが見られましたが、ホルモン値の異常はありませんでした。
そして…PCO(PCOS)の人が体外受精をする場合は、下記に注意する必要があります。
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排卵誘発剤の影響によって、10個程度の卵胞が急に大きくなり、OHSS(卵巣過剰刺激症候群:採卵・排卵後に卵巣が腫れる副作用。胸水がたまって呼吸困難に陥ったり、血栓症になることもある)が起こりやすい(※出典4)
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排卵誘発剤が効きすぎると採卵個数が多くなり、治療費が高額になる(採卵個数によって料金が異なるクリニックを受診した場合)
私はこの理由から、PGT-Aのための体外受精トライを断念しました(金が無ぇ…)。
多嚢胞性卵巣は不育症と関連性がある?
多嚢胞性卵巣が発覚した瞬間、私が徹底的に調べたのは「多嚢胞性卵巣と不育症との関連性」です。結論から言うと、関連性はハッキリしていません。が、気になる情報をいくつかシェアします。
上記は関連性を示唆したものをピックアップしたので、逆に否定的な学説も多く存在すると思います。どちらが正しいかはわかりませんが、唯一言えることは、「自分が流産し続けた原因の一つに、多嚢胞性卵巣も含まれるのではないか?」と考えて私自身は治療法を選択し、実際に出産に至ったということです。
4回目の妊娠に向けて行った不育症対策
さて、ようやく本題です。不育症に関連しそうな検査を一通り受け、おまけに多嚢胞性卵巣も発覚した私が、再度の妊娠継続に向けて行ったのは以下の3つです。
- 不妊治療クリニックでホルモン治療(多嚢胞性卵巣の対策)
- 流産防止(妊娠継続)のための薬&サプリ内服
- 妊娠確認後は、不育症専門医のいる病院で毎週妊婦健診を受ける
不妊治療クリニックでホルモン治療(多嚢胞性卵巣の対策)
もし「多嚢胞性卵巣が不育症の一因」という仮説が正しかった場合、多嚢胞性卵巣の治療・対策にあたる必要があります。
そもそも多嚢胞性卵巣とは、たくさんの⼩さな卵胞(嚢胞)が卵巣内にとどまってしまう疾患です(※出典5)。通常は排卵に向けて数十個の卵胞が育ち始め、十分に成長した1個の主席卵胞が排卵され、その他の卵胞は途中で成長が⽌まって小さくなっていきますが、多嚢胞性卵巣だと主席卵胞が育ちにくく、なかなか排卵が起こらないのが特徴です。
私の場合、妊娠しまくっているので無排卵ではないですが、生理周期は平均42日と長いので、いわゆる「稀発排卵」ではあったと思います。
で、これはただの仮説として聞き流してほしいのですが…
=古い卵胞が残っているせいで、総合的に卵の質が悪い?
=流産する卵子が排卵されやすい?
と私は推理しました。
…あ、私個人の妄想です!!!でも一応参考リンクも載せておきます(東京HARTクリニック「PCO(多嚢胞卵巣)なのですが、東京HARTクリニックではどのような治療を行っていますか?」)。
私は不育抗体持ちですが、過去3回の妊娠時の胎嚢はいずれも週数より成長が遅く、3回目に至っては染色体異常が発覚したのも事実です。つまり、流産する卵子ばかりが排卵されている可能性はあると考えました。
そこで私が多嚢胞性卵巣の対策として行ったのは、ホルモン治療です。
手始めに排卵誘発剤の「レトロゾール」という経口薬を内服しましたが、1週間経っても主席卵胞があまり育っていなかったため、「ふぉりるもん」という排卵誘発剤を150単位で注射投与しました。
その数日後からタイミング法を行い、妊娠が確認されました。
流産防止(妊娠継続)のための薬&サプリ内服
私が不育症検査で引っかかった項目は、以下の3つです。
- 抗プロトロンビン抗体
- ビタミンD欠乏症
- 潜在性甲状腺機能低下症(症状には表れない程度の軽い甲状腺ホルモンの不足状態)
それぞれの治療法や薬の服用期間を、簡単に紹介します。
抗プロトロンビン抗体異常
治療法:バイアスピリンの内服
服用期間:妊娠確認前(高温期の中盤)〜妊娠35週まで
私の抗プロトロンビン抗体の数値は、基準値より少し高い程度だったので、複数の不育症専門外来で「対策はバイアスピリンのみで大丈夫(ヘパリンは不要)」と言われました。
で、肝心なバイアスピリンの服用をいつ始めるかは、クリニックによって方針が異なるのが厄介ですが…、私は杉ウイメンズクリニックの指示に従って、妊娠が確認される前に(高温期の中盤から)飲み始めました(※出典6)。
妊娠初期は少量の不正出血が起こり、切迫流産の診断が下ったこともありましたが、この出血はバイアスピリンによる副作用かと思われます。妊娠10週頃から出血は治まり、以降はトラブルもなかったので、35週まで内服を続けました。
ビタミンD欠乏症
治療法:ビタミンDサプリの内服
服用期間:発覚後〜安定期まで
サプリは、ビタミンD欠乏症の発覚後(妊娠の1ヶ月前くらい。服用してもすぐ数値が改善するわけではないので、もっと早くから飲んでおけば良かった…)〜妊娠16週の安定期に入る頃まで飲んでいました。
なぜ安定期あたりで中断したかというと、ビタミンDは脂溶性なので体内に蓄積され、過剰摂取すると他の健康障害が出る恐れがあるためです(※出典7)。中断時のビタミンDの数値は特に確認していないのですが、産科医と相談し、胎児が順調に育っていたこともあって内服をやめました。
潜在性甲状腺機能低下症
治療法:チラージンの内服
服用期間:発覚後〜出産当日
潜在性甲状腺機能低下症は、なんと妊娠後の採血検査で発覚しました…。実は過去の流産時も甲状腺の数値が悪かったことがあるのですが、数日後の採血では数値が改善したのでスルーされました(これが厄介なところ)。
チラージンは、発覚後(妊娠中)〜出産当日まで内服を続けました。数値が良くなったり悪くなったりを繰り返したので、妊婦健診の度に薬の量を適宜増やすなどの対応が必要でした。
妊娠確認後は、不育症専門医のいる病院で毎週妊婦健診を受ける
と4回目の妊娠を告げられた瞬間の心境は、嬉しさが1割、圧倒的不安が9割です。
という恐怖心でいっぱいでした。
妊娠初期〜23週までの健診の頻度は「4週間に1回」が基本ですが、初期流産を繰り返した身としては、毎日…いやせめて毎週の健診で安否確認をしたい。
なので私は、不育症妊婦へのメンタルケアが充実している、TLC(Tender Loving Care:テンダーラビングケア/不育症の既往を持つ人が妊娠した時に行く)外来のある産科に通院することに決めました。
不育症専門医のいない一般産科での妊婦健診の注意点
一般の産婦人科でも、事情を話して頼み込めば、毎週妊婦健診を受けさせてくれるかとは思うのですが、不育症専門医のいる病院のほうが患者の気持ちを圧ッッッッ倒的に早く理解してくれます(断言)。健診頻度もですが、バイアスピリンやヘパリンの投与についてもです。
不育症の知識のない医師だと、
とやめさせようとしたり、薬を処方してくれなかったりというトラブルが起こる、という話を聞いたことがあるので…(そんな石頭な先生は少数派だと願いたいですが)。
長くなりましたが、以上が4回目の妊娠→出産に至るまでの治療歴・検査歴・思考変遷歴です。
自分なりの不育症攻略法が合っていたのか、たまたま健常な受精卵が作られて出産できただけか、真実はわかりません。
が、同じような症例で流産を繰り返している方や、不育症の治療方針で悩んでいる方にとって、「成功率の高い治療法を推理して実行する」(これが一番大事!)ヒントになればと思い、記事化しました。
私は医師ではなく患者なので、皆さんに治療法のアドバイスをすることはできませんが、一人でも多くの不育症患者さんが無事出産できる日が来ることを心から願っています。
次回の記事のテーマは決めていませんが…余力と情報があれば書きたい記事は↓です。
・多嚢胞性卵巣と不育症の関連性(今回よりもマニアックに深掘り)
・着床前診断(PGT-A)のメリット、デメリット、注意点
ASCAは出産できましたが、不育症の闇を放置したまま死ぬわけにはいかないので、心はずっと患者さんの傍におります。
今後はもっと近くで患者さんと交流できる機会を増やしていこうと画策中なので、首を長ーーーくしてお待ちいただければ幸いです。
それでは。
※出典1:木場公園クリニック「胚盤胞移植とは?妊娠の確率を上げる体外受精の基礎知識と流れ」
※出典2:浅田レディースクリニック「AMHについて」
※出典3:一般社団法人 日本内分泌学会「多嚢胞性卵巣症候群」
※出典4:セントマザー産婦人科医院「多嚢胞性卵巣(PCOとPCOS)・卵巣過剰刺激症候群」
※出典5:あすか製薬株式会社「多嚢胞性卵巣症候群について」
※出典6:杉ウイメンズクリニック「低用量アスピリン療法について、皆さんの疑問にお答えします」
※出典7:健康長寿ネット「ビタミンDの働きと1日の摂取量」
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