ご無沙汰しています、ASCAです。
Twitterをご覧頂いている方はご存知かと思いますが、ブログを読んでくださっている方々に向けてご報告させて頂きます。
昨年夏に4度目の妊娠をし、10ヶ月間の不育症治療を経て、今春に出産を致しました。
ショックを受ける方もいらっしゃるのでは…と投稿に関しては心底悩みましたが、
・「もう流産したくない。妊娠するのが怖い」という考えからの脱却
・妊娠や出産に至るまで、私が行った検査&治療法
をシェアすることで、同じ患者さんの励みやご参考になればと思い、記事化します。
長い話になるので、2回に分けてお話しします。今回は、「次の妊娠への恐怖心を和らげるために、実践したメンタルケア」についてです。
「もう流産したくない。妊娠するのが怖い」という考えから抜け出すには?
流産・死産を経験したり、何回も繰り返すと、「妊娠しても、どうせまた流産してしまうのではないか」と考えたりしてしまいませんか?
夫婦間の子供を望むのであれば、妊娠にトライする必要がある。でも、妊娠することが怖い。100%流産しない確約がない限り、妊娠したくない。
そう思っていた私にとっては、「妊娠への恐怖心を克服する」ことが課題となりました。
「妊活を休む」という選択肢
そこで私が実践したのは、「妊活を一旦休む」ことです。
私が3回目の流産をしたのは、2019年1月。そして4回目の妊娠にトライしたのは、2020年の夏。つまり、1年以上は休みました。妊活ノイローゼというか、重度のうつ病を発症していたからです。
とはいえ当初は、休むことに抵抗がありました。妊活を休んでいる間も着実に年は取るし、周囲に追い抜かされるストレスや焦りは大きい。
それに、不育症の専門医からも反対されました。
医学的には「若いうちに妊娠すべき」
3回目の流産後、不育症の専門医に「妊活に疲れたので治療を休みたい」と伝えたところ、
と反対されました。医学的には、加齢とともに流産率が上がるとされているからです。
(てか、「一回でも多く」って何やねん。また流産するかもだけど何度もトライしろってか?私は産む機械じゃないんだぞ)
この加齢リスクについては、私も悩みました。卵子が老化して胎児染色体異常率が上がったら、ますます出産できなくなるのでは?と。
ですが、「よし!じゃあ早速次の妊娠にトライしよう!」という精神状態ではなく…むしろ「これ以上同じ目に遭うなら、もう二度と妊娠したくない」とさえ思っていました。
妊活に疲れたら、休むべき?休まず続けるべき?
妊活を休むべきか、休まないべきか。
これは、患者さんの年齢(あるいはAMH:卵巣年齢の数値)、精神状態、ご夫婦の考え方によって答えが変わってきます。
私が「休む」ことを選んだのは、下記の理由からです。
- 夫が妊娠させるのを怖がっていた
- 比較的若い患者だった
- 「若いうちに妊娠した方が出産できる」説への疑念
- 妊活以前に生きる気力が湧かなかった
夫の本音を聞いてみる
患者さんご自身には「子供を持ちたい」という願望があり、旦那さんも同じ気持ちをお持ちだと思います。
我が家もそうでした。が、流産を繰り返すうちに夫婦ともども疲弊し、「子供を持ちたい」気持ちより、「妊娠への恐怖心」が上回るようになっていました。
↓は、夫の言葉です。
流産を繰り返す度に、妻の精神状態が不安定になる。それを側で支え続ける夫の負担も、相当大きかったのだと思います。
そんな夫の本音を聞いて、妊活を暫く休もうと決心しました。必死に続けても、また同じことが繰り返されたら、お互いの心も関係も壊れてしまうのでは…と懸念したからです。
妊活や不育症治療は、妻側が一人で頑張る(背負う)ものではありません。夫側の協力も必要不可欠です。
しかし、夫婦間で治療への温度差があると、長期戦になればなるほど辛くなるので、「心身&経済的負担を治療に何年も掛け続けてまで、本当に子供が欲しいのか?」を本音で話し合う時間も大切だと思います。(我が家はガチンコで話し合って、「どっちでもいい」という結論に達しました)
年齢的なリミットを考える
20代の流産率は10%強ですが、30〜34歳は約15%、35歳を超えると20%以上になるとされています(※出典1、2)。
私が3回目の流産をした当時は29歳。比較的若い患者に該当したので、長期間妊活を休む決意ができました。しかし、
という患者さんもいらっしゃると思います。
もし私が同じ立場なら、卵子凍結も視野に入れてトライを続けたでしょう(「やらずに後悔より、やって後悔」なので…)。
ただ、流産してから妊娠許可が出るまでの数ヶ月間は、リフレッシュ期間として好き勝手に過ごします。そのエネルギーすらない状態であれば、うつ病(★)の可能性があるので、精神科を受診したと思います(想像の範疇のお答えしかできず、申し訳ありません…)。
「若いうちに妊娠した方が出産できる」のか?
「女性は35歳以上になると、妊娠率の低下だけでなく流産率も増加する」というのは、医学的には事実なのだと思います。が、私はこの説を信じることができませんでした。
私自身が「妊娠適齢期」とされる28〜29歳の間で、3回も流産している。つまり若いうちに妊娠しても、出産できなかったからです。
この件について、医師からは
と言われました。しかし、「本当にたまたまなのか?」という疑問は、今も残り続けています。
と、考えました。2回目まで胎児絨毛染色体検査ができなかったので、全てが染色体異常によるものかは闇の中ですが…(私は不育症抗体持ちなので、そっちが原因の可能性も十分あります)。
ただ、こうした疑問を突き詰めた末、4回目の妊娠で出産に行き着いたのも事実です。具体的に行った検査&治療法については、次回の記事をご覧頂ければ幸いです。
妊活以前に生きる気力がない場合
流産と精神疾患には、深い関連性があります。特に流産直後は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症者が約29%、中〜重度の不安症状の発症者が約24%、中〜重度のうつ病の発症者が約11%で、メンタル不調は長期化する傾向にあります(※出典3)。
私も、3回目の流産後に重度のうつ病を発症しました。
・食欲が湧かず、ほとんど食べない
・眠れない
・何の気力も湧かない
・唐突に涙が出てくる
自分がうつ病だという自覚は全くなかった(ここが厄介)ですが、流産手術後の内診時、「様子がおかしい」と気づいた医師&看護師から精神科の受診を勧められ、そこで診断された次第です。
精神科医とは、次のようなやりとりをしました。
当時の私は、「明日を生きて迎えることさえ難しい」状態でした。
また子供を死なせてしまった
自分だけが生き延びてしまった
自分も死んで、3人の子に会いに行きたい
「子供を迎えたい」より、「この世から消えてしまいたい」気持ちが断然強かったです。まずは抑うつ状態を回復させないと、妊活どころではないと痛感しました。
妊活を休むと「追い抜かされる焦り」から解放される?
妊活を休むことに抵抗があった私ですが、妊活に励んでいる間よりも休んでいる間のほうが、周囲に追い抜かされる焦りは少なかったです(人によりけりでしょうが…)。
と開き直ることができたからです(単純)。
なぜ、「もう一度、妊娠にトライしてみよう」と思えたのか?
流産が怖くて妊活したくなかった私が、「妊娠にトライしてみよう」と思えるようになったのには、いくつか理由があります。
②妊活から離れたら、「出産や育児だけが私の人生(使命)ではない」と思えるようになった
→次の妊娠へのプレッシャーが減った
個人的には、「妊娠へのプレッシャー(恐怖心)を減らす」ことが大切だと思います。そのために実践したメンタルケアを、ご紹介します。
「出産や育児=自分の人生」と思わない
私は精神科医から、こう問い掛けられたことがあります。
それは違う、とハッとしました。
自分は妊娠・出産できる性別に生まれ付いたけれど、だからといって子供を産まなければいけないわけではないし、出産することだけが私の人生ではない。
元々私は結婚願望は希薄なほうで、特に子供好きでもありませんでした。
私の場合、理由は大まかに2つありました。
・流産を繰り返したことで、出産への執着心が強くなってしまったから
他の既婚者には「子供がいないのはおかしい」とは思わないのに、なぜか自分自身にはそれを義務として課していました。
さらに、周囲が妊娠→出産していく姿を自分と比べては劣等感でいっぱいになり、その劣等感を「無事出産すること」で払拭しようとする心理状態に陥っていたのです。
そう気づいてから、うつ病の治療に専念できるようになりました。数ヶ月後には抗うつ薬が効き始め、笑顔で過ごせる時間も増えました。
子供がいなくても「誰かの役に立っている」実感を持つ
流産や死産を繰り返した方は自責の念が強く、自己肯定感がかなり低い状態になっていると思います。「自分のせいで子供が亡くなってしまった」「自分に生きている資格はない」など…。
絶対にそんなことはありません!
…と私が言っても、気休めにしか思えないかもしれませんが、ご自身が気づいていないだけで、あなたは生きている時点で絶対に誰かの役に立っています。
ご家族の心の支えであったり、職場では欠かせない人材だったり。極論、コンビニでおやつを買うだけでも経済に貢献しています。店員さんに優しく接すれば、「いいお客さん…癒された…」と心に刻んでもらえることでしょう。
私自身も、誰かの役に立った実感が欲しくて、このブログを始めました。
自分の子は3人亡くなってしまったけれど、せめて同じ思いをする不育症患者さんが減ればいい。元気な赤ちゃんを抱っこできる患者さんが一人でも増えればいい。
という思いを込めて、漫画や記事を書き続けてきました。そして患者さんから感謝の言葉を頂く度に、「こんな私でも、生きていて良かったな」と思えるようになりました。(本当にありがとうございます)
そうして妊活以外にエネルギーを割くうちに、「子供がいない生活でも、生き生きと暮らせる」ことに気づきました。
「子供がいる=幸せ」とは限らない、という視点
妊活を休んでいる間、衝撃的だったニュースがあります。元農水事務次官(当時76歳)が、無職の息子さん(当時44歳)を殺した事件です。一言では語り尽くせない痛ましい話ですが、ニュースを観た時に抱いた感想が、
でした。円満な家庭もあるけれど、そうでない家庭もたくさんある。私が子供を産めたとしても、どう転ぶかはわからない。
ネガティブかもしれませんが、「子供がいないほうが幸せに暮らせるケースもある」という視点で、日常を振り返るように意識していました。
マイペースな私は「子供がいない人生もいいな」と思うようになりました。負け惜しみではなく、本心から。
すると、その頃から自分の中で妊活をタスク化しないようになり、徐々に次の妊娠へのプレッシャーも減り、妊活に踏み切れるようになっていったのです。
と疑問に思う方もいるかもしれません。
それは、「愛する夫との子供が欲しい」という願いが、心の中にはあり続けたからです。「子供がいない人生”でも”いい」と思いましたが、「子供がいない人生”が”いい」となったわけではない、ということです。子を亡くし続けた未練かもしれません。
「妊娠にトライしないと子供は産めない」と腹を括る
「妊娠したら流産する」というトラウマが根付いた私にとって、再度の妊活はかなりの勇気が要りました(「コウノトリが運んできてくれたらいいのに」と何度思ったことか…)。
でも結局、「妊娠にトライしないと子供は産めない」のが現実。なので仕方なく腹を括って、再チャレンジを決めたのです(決心が着いたのは、妊活を休んでエネルギーを蓄えたからこそだと思っています)。
過去の流産原因を考察→対策を徹底して、「次こそ出産できる」と思い込む
妊娠に挑む決意ができるまでにメンタルは回復したものの、流産へのトラウマが消えたわけではありません。「流産するのが怖い」という思いは、ずっと無くなりませんでした(何なら妊娠中、安定期を過ぎてからも恐怖の日々でした)。
残酷ですが、流産を100%防ぐ方法は確立されていません。ただ、流産する可能性を減らす方法も必ずあるはず。そう考えた私は、過去3回の流産の症例を統計化+未検査項目を検査→原因を考察して、できる限り対策をしました(次の妊娠こそは上手くいく!と思い込まないと、先に進む勇気が出なかったので…)。
私が行った検査&治療は次回の記事でお話ししますが、とにかく全患者さん目線で大事なのが「過去の流産原因の考察」。
流産は何かしらの原因があって(or複数の原因が混在して)発生する現象です。一通りの検査をして原因が判明した患者さんは、それに即した治療法を選択することが大切です。原因不明の患者さんは専門医と相談し、過去の流産原因を推察→必要に応じて対策を講じることが重要になってくるのではないでしょうか。
おわりに:「諦めた頃に子供が産める」わけではない。むしろ逆!
この話を読んで、
と思う方もいるかもしれませんが、ごめんなさい、それは心外です。私は諦めなかったからこそ、出産に至ることができました。
ただ、「子供が産めない人生でも構わない。それなら”子供がいたらできない”人生の楽しみ方をしてやる」という心構えではいました。治療がうまくいかなかったとしても、精神を何とか保って生きていくための「保険」として。
私の心境の変遷を綴った記事なので、期待外れの内容だったら本当に申し訳ありません…。流産後のメンタルの立て直しで悩んでいる方にとって、一つの参考例としてお役に立てれば幸いです。
次回の記事もお楽しみに。
※出典1:seem Lab「女性の加齢にも関係がある!? 知っておきたい流産の基礎知識」
※出典2:一般社団法人日本生殖医学会「年齢が不妊・不育症に与える影響」
※出典3:獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター「不育症のこころのケア」
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