こんにちは、ASCAです。
私は20代で3回流産したのですが、初めて流産した時、流産を繰り返した時、こう疑問に思いました。
流産された方や不育症の方は、きっと同じ疑問を抱えたことでしょう。
ちなみに私は1~2回目の流産時、医師から↓のような原因説明を受けました。
どこか釈然としない、モヤッとする回答でした。
(というかこの回答で、「あ、そうなんだ!じゃあしょうがないね!」と思える人っているんでしょうか・・・?)
私は説明に納得できず、漠然と「自分のせいで流産したのかも」と考えるようになり、うつ病になりました。
流産経験者の方には、同じ道を辿ってほしくありません。流産の原因がわかれば、無闇に自分を責めることはなくなるはずだからです。
ということで今回は流産や「不育症」の原因について、わかりやすく解説していきたいと思います。
(医療機関等のサイトを参照してまとめましたが、一患者に過ぎないため、不備があったら恐縮です。入門書的な感じでご覧頂けると幸いです。)
流産の原因って?
そもそも流産とは、妊娠22週未満で胎児が亡くなってしまうことです。流産は妊娠の約10〜15%に起きる現象で、決して珍しくありません。
この流産のうち90%以上が、妊娠12週未満で起こる「早期流産」です(※出典1)。早期流産の原因は、ざっくり下記の3つに分けられます。
②不育症因子(←割とある)
③感染症、その他
流産の原因①胎児の染色体異常
早期流産の原因の約70〜80%は、「胎児の染色体異常」によるものです(※出典2)。
染色体異常とは、染色体の数や構造に異常がある状態のことです。ヒトは2本1組の染色体を23組・合計46本を持って生まれますが、「数の異常」or「構造の異常」がある受精卵の多くは、妊娠に至らないor流産・死産する運命にあります。
●「数」の異常
→染色体の数が多いor少ない状態
例)トリソミー(2本1組のはずの染色体が3本ある)、モノソミー(2本1組のはずの染色体が1本しかない)など●「構造」異常
→染色体が切断され、構造が一部変化した状態
例)不均衡型転座
なお、「構造異常」による流産は、「夫婦の染色体転座」が遺伝したことが原因で起こった可能性があるので、次回以降の流産対策が必要です(詳しくは後述します)。
染色体異常について詳しく知りたい方は、下記のサイトをご参照ください。
・ラボコープ・ジャパン合同会社「流死産絨毛・胎児組織(POC)染色体分析」
・有限会社胎児生命科学センター「流産を経験された方へ」
胎児染色体異常による流産は「自分のせい」なのか?
赤ちゃんは両親から染色体を23本ずつ受け継いで生まれるので、染色体異常による流産は「卵子が受精した瞬間に起こる偶発的なもの」です。つまり、「妊娠した後の行動」が原因で流産したわけではありません。自分を責めないでください。
ただ、胎児染色体異常による流産率は、母体の加齢に伴い上昇することがわかっています。日本生殖医学会の統計によれば、流産率は20代では15%程度ですが、30代後半では約25%、40代では約50%とのことです。
しかし、母体だけが原因とは限りません。男性の「精子の異常」も流産に関連している可能性があります(※出典3)。
流産の原因②不育症因子
早期流産の原因の約70〜80%は「胎児の染色体異常」ですが、残り20〜30%は「胎児の染色体が正常だったのに、流産したケース」です。
この場合、疑われるのが「不育症因子」です。
「不育症」とは、2回以上流産・死産を繰り返す状態のことです(化学流産は含まれません)。1回だけの方は基本該当しませんが、1回でも妊娠10週以降に子宮内胎児死亡を経験した(一度は胎児の心拍が確認できたが、その後心拍が停止した)人は、「不育症検査」が推奨されます。
主な不育症因子は以下の通りです。
抗リン脂質抗体陽性(抗リン脂質抗体症候群)
例:抗カルジオリピン抗体(IgG/IgM)、抗PE抗体(IgG/IgM)、抗PS抗体(IgG/IgM)、抗プロトロンビン抗体など。
不育症患者さんに最も多く見られる不育症因子です。抗リン脂質抗体には様々な種類があり、流産・死産を引き起こすメカニズムは解明されていません(※出典4)。
これまでは「妊娠中、胎盤に血栓を作って胎児への血流を悪化させ、流産を引き起こす原因抗体」と考えられていましたが、近年では「胎盤の機能不全を引き起こす原因抗体」という見方も強まってきているようです(※出典5)。
なお、「抗リン脂質抗体が陽性=抗リン脂質抗体症候群」とは限りません。これはかなり複雑な話なので、詳しく知りたい方は下記のサイトをご参照ください。
・メディカルノート「抗リン脂質抗体症候群が原因の不育症は正しい検査・診断のもとで治療を受けることが大事」
・南山堂「抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン」
血液凝固異常
例:第Ⅻ因子、プロテインS(抗原/活性)、プロテインC(抗原/活性)など。
血液凝固異常があると、血が固まりやすく血栓ができやすくなります。胎盤に血栓ができた時に流産・死産につながると考えられていますが、血液凝固異常が流産を引き起こすメカニズムはまだ解明されていません。
内分泌(ホルモン)異常
例:甲状腺機能検査(TSH/FT4)、黄体中期プロゲステロン、黄体中期エストラジオール、プロクラチン高値など。
甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症、黄体機能不全(受精卵が子宮内膜に着床しやすい状態に整え、妊娠を継続させる作用をもつ「女性ホルモン」の分泌量が少ない状態)などホルモン異常があると、流産しやすくなるとされています。
子宮形態異常
例:子宮奇形(双角子宮、中隔子宮など)、子宮筋腫、子宮線維症、アッシャーマン症候群など。
子宮奇形や子宮筋腫などがあると、流産しやすいといわれています。ただ、子宮形態異常があっても100%流産するわけではないため、症例の程度で手術を実施するかどうかが決まります。
同種免疫異常
例:NK細胞活性異常、Th1/Th2細胞のバランス異常など。
母体が父親の一部を含む胎児を異物とみなし、排除しようとするのが同種免疫異常です。本来はこういった免疫活性は起こらないため、多くの妊婦さんは出産できますが、同種免疫異常のある女性は流産を繰り返すことになります。
解明されていない部分が多いですが、NK細胞活性の高値やTh1/Th2細胞のバランス異常が妊娠継続を左右すると考えられています。
夫婦の染色体転座
流産した胎児の染色体を調べた結果、「不均衡型転座」という染色体の構造異常が見つかった場合は、ご夫婦いずれかが染色体の構造異常(相互転座やロバートソン転座など)を持っており、それが胎児に遺伝して流産した可能性があります。
※夫婦の染色体転座が原因で流産するのは、胎児の染色体が「不均衡型転座」になった時のみです。「均衡型転座が遺伝した」or「染色体が正常」の胎児は、発育・出生できるとされます(ロバートソン転座の場合、ダウン症(21トリソミー)の胎児が生まれる可能性があります)(出典6)。
染色体転座について詳しく知りたい方は、下記のサイトをご参照ください。
・メディカルノート「不育症の原因-染色体構造異常がみつかっても、最終的に出産できることが多い」
・東京HARTクリニック「染色体転座について」
流産の原因③感染症、その他
妊娠中、風疹や麻疹、梅毒、クラミジアなどの特定の感染症に感染した場合、原因菌やウイルスが原因で流産や早産が引き起こされることがあります(※出典7)。
また、妊娠中の喫煙(受動喫煙も含む)も、ニコチンや一酸化炭素が胎盤の酸素放出・供給を阻害し、流産や死産を招く可能性があるそうです(※出典8)。
不育症(繰り返す流産)の原因って?
流産を繰り返す「不育症」の場合は、主に以下の2つの原因が考えられます。
- 「胎児の染色体異常」が偶然繰り返された
- 夫婦いずれかに「不育症因子」がある
胎児の染色体異常を偶然繰り返した可能性もありますが、2回以上流産した場合、母体や夫婦の染色体転座といった「不育症因子」が疑われます。専門外来で「不育症検査」を受けることが勧められます。
不育症のリスク別頻度は↓の図の通りで、検査にて不育症因子が見つかる方も少なくありません(出典9)。
しかし、不育症はまだ研究段階の疾患なので、詳細な不育症検査を実施しても異常が見つからない「原因不明」のケースも35~60%ほどあります(※出典10)。
原因不明の場合は、「胎児の染色体異常を偶然繰り返した」or「現在の医学では見つけられない未知の不育症因子がある」可能性が考えられます。切実に、医学の発展を願うばかりです。
流産したら「2つの検査」を受けよう!
流産を繰り返さないために、受けていただきたい検査が2つあります。不育症因子を調べる「不育症検査」と、流産した胎児の染色体異常の有無を調べる「胎児絨毛染色体検査」です。
特に「胎児絨毛染色体検査」は、医師から案内される患者さんが少ない+高額なため、1回も検査をしないまま流産を繰り返す患者さんが少なくありません。
(※流産手術時の「病理検査(胞状奇胎か調べる)」とは別の検査です)
胎児絨毛染色体検査については、過去の記事でも取り上げています。併せてご参照ください。
・「流産と診断されたら「絨毛染色体検査」を受けよう−今後の流産を防ぐために」
・「流産しても「絨毛染色体検査」を受けられない人が多い? ガイドライン上の基準は?」
絨毛染色体検査は、流産の原因をハッキリさせる上で非常に重要です!結果によって、流産の原因や今後の対策ルートが↓のように異なります。
1)染色体の「数」の異常
→流産は受精時に偶発的に起こったもの(★)。2)染色体の「構造」の異常
→夫婦の染色体転座が原因で流産した可能性がある。不育症検査にて夫婦の染色体を調べ、転座があれば遺伝カウンセリングを受け、次回妊娠時は「着床前診断(体外で受精させた胚の染色体や遺伝子の検査を行い、病気を持たない可能性の高い胚だけを子宮に戻す)」を実施する。3)染色体が「正常」
→母体に不育症因子がある可能性が高い。不育症検査が必要。
★今回の流産原因が胎児染色体異常だとしても、「=不育症因子がない」とは限りません。流産を繰り返さないために、念のため不育症検査を受けることをお勧めします。
「自分のせいで流産した」と思わないで
長くなりましたが、私が記事を通じて流産した方に伝えたいのは、「自分を責めないでほしい」ということです。
早期流産の多くは、偶発的な赤ちゃんの染色体異常です。残酷ですが、受精の段階で既に長く生きられないと決まっていた命なので、あなたの妊娠中の行い(食習慣や仕事、服薬など)が原因で流産したわけではありません。決してご自身を責めないでください。
不育症因子が原因で流産した方も、「自分のせいで・・・」と思わないでください。
私は2回目の流産後に不育症因子が発覚し、自分を責めたことがあります。でも、わざと自分が原因因子を持ったわけではないし、亡くなった子供たちも、自分を責める母親の姿を見て心を痛めていると考えるようになりました。以来、私は自責の念をなるべく抱かないようにしています。
早期流産は、医師から「おそらく胎児の染色体異常でしょう」の一言で片付けられることが多いです。
しかし、胎児の染色体異常による流産は約70〜80%に過ぎず、20〜30%の方は「不育症因子」等が原因で流産した可能性があります。
後者は今後も流産を繰り返すリスクがあるので、下記の対策を事前に行うことをお勧めします。
いずれの検査も「2回以上流産しないと実施しない」と拒否する医療機関が多いのが残念ですが、流産の原因がはっきりすれば、以降の流産対策が見つかる可能性があります。
流産の原因がわからず、漠然と自分を責める女性が増えないことを祈るばかりです。
それでは。(間違い等あれば、ご指摘いただけると幸いです)
※出典1:不妊症・不育症応援サイト「あしたのママへ」
※出典2:公益社団法人 日本産婦人科医会「2.早期流産に対するインフォームドコンセントの注意点」
※出典3:公益社団法人 日本産婦人科医会「1.総論(表1)」
※出典4:メディカルノート「不育症の原因」
※出典5:メディカルノート「不育症や流産を防ぐには?抗リン脂質抗体症候群合併妊娠に対する治療・管理」
※出典6:東京HARTクリニック「染色体転座について」
※出典7:東京都福祉保健局「母子感染について~妊娠中・これから妊娠を考えている方へ~」
※出典8:鳥取産院「よくあるご質問」
※出典9:Fuiku-Labo「不育症のリスク因子(検査異常)」
※出典10:国立成育医療研究センター「不育症の原因は?」
コメント